豆腐屋もWarRockプレイヤー

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対話

2008.05.22
これは、共通の知り合いである"彼"についての、私と、ある人の会話である。

カッコウは他の鳥の巣に卵を押し付ける。これは育児放棄だね。
パンダは育児が苦手で、たまに赤ちゃんを押しつぶして殺してしまうらしい。これは児童虐待だと思うよ。

さて、振り返って人間はどうだろう・・・この動物はもっとひどい。平気で赤ちゃんをポストに捨て、虐待の例は毎朝の新聞が提供してくれている。

この様な無責任集団には、ぜひ有袋類のカンガルーを見習ってほしいな。四六時中子供を袋の中に入れて子育てとは、見上げたものだとは思わないかい?

・・・・え?偏見だって?まぁ話はこれからだから見逃してほしい。言いたいのは動物の話じゃなくて彼の話なんだ。

子供は確実に、was born.つまり自らの希望で生まれてきたのではないよね。親が勝手に産み落とすものだ。だから、子供には持って生まれた夢が無い。人生の意義やら、目標やら、夢やらは、後付になるんだ。

では、自らの人生に何も見出せない場合はどうなるのだろう。それは次の詩が如実に表してくれている。

意味の無い人生は耐えられるものではない
我々は、身を捧ぐに足る使命を見つける
人生に目的が見つからなければ、我々は争いのうちに生きる
あるいは、ナイフで自ら身を引き裂き
血を流す


彼がまだ小学生の頃に読んだ翻訳詩の一節だ。多くの若者と同じく、当時の彼もまた、自分の生きる意味を-何故生まれたんだという問いの答えを-探していたんだ。夢を何とかして作ろうとしていたんだよ。

でも、見つからなかった。彼は生きるのが苦しいと思ったが、死ぬこともできなかった。今度は死の苦しみが待っているからね。

"何故生まれたんだ" という自分に対する問いが、いつしか"何故生んだんだ"という苦悩、そして"よくも苦痛だらけの世界に生んでくれたな"という恨みに変わるのに、さほど時間はかからなかったようだ。世間とは少し違う彼の性格や言動、それに親の無神経さがそれを早めたのも確かだろうけどね。

この頃の彼は、間違いなく"争いのうちに生きる"か、"ナイフで自ら身を引き裂く"の一歩手前であったと思うよ。当時の彼の目は光が無くて、生きていて死んでいるようなものだったよ。

こうした彼を変えたのはね、別の彼、自分を客観視でき、かつ自分の主観に影響を及ぼせるもう一人の自分であったんだ。

その自分は、自分に、自分の将来を見事に予想した上で、自分にこう囁いたんだ。"私よ。生き抜いて、すべてを見返したくないのか?"

死にたくないという思い、負けず嫌い、どうせならば・・・という良い意味での投げやりな気持ち、根っからの反骨精神、逆境に耐え、勝ち抜こうとする意志、それらが彼のすべてを変えたと思うよ。

私が長話をようやく終えると、それまで黙って聞いていたその人は、ゆっくりと話し始めた。

「世の中を恨み、肉親を憎み、自分を嫌悪した過去の気持ちは、未だにその彼の心を支配しそうになるんじゃないかな。そうした気持ちは骨の髄まで自分に染み込んでいるものだよ。」

だが私には、彼はもう過去を克服しているように見えるよ。私はそう返した。

「過去を乗り越えたといっても、まだ彼には、彼の人生の意味は解っていないよ。でも知る必要は無いんだ。意味が無くても耐えられるようになったようだからね。彼は、人生の最期、それはいつになるのかわからないけれど-そういってその人は空を仰ぎ見た-その時に、親に、神に、自分に、ついでに世界中に、"勝ったぞ!"って笑ってやりたいんだ。あ、それが彼の存在意義かもしれないね。」
その人はそう言って、私のほうを向いた。十数年前とは違う、立派な人間の双眼を光らせていた。

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